物書きになりたい、なれるかもしれないと思い立ち、とっかかりが何も無いまま町の文房具店で原稿用紙を買って、詩のようなものを書き始めたのは16才の頃だった。当時の「DOLL」や「Fool's Mate」のような雑誌には「ミニコミ・サークル募集」「友達募集」などといった読者参加のページがあり、日本全国のミニコミ編集者が書き手を募っており、今では考えられないことだが、ほぼ全員の本名と住所が掲載されていた。急に大手の出版社に原稿を持ち込むような度胸も才覚も無いので、そうしたインディーズの出版物と関わりを持つことからきっかけが掴めるのではないかと考え、ある東京の文芸誌を作っている人に書いた詩を数篇送ってみた。
媒介
昔好きだった人にポストカードを送ったら、数週間後のある日ポストに返信が入っていた。今でも家にあるはずだけど、私は物を大切にするとか、きちんと整理することができないので、もう滲んでしまって読めない。
だれでもしっかり見ているよ
平日の昼間に街をぶらぶらするのが好き、馴染みのない街だと更にいい。その時だけは、何にも関係のない自分になれる気がするから。街の天使の、あるいは街の幽霊の気分で歩き続ける、わたしはそのままいなくなってしまいたい。用もないのに地下鉄やバスに乗って移動し続ける。カメラを持っているわけでもないし、自分がほんとうに誰の目にも留まっていないように思える。
慌てないでっていってるんでしょ?
もう直接話すことなんてできない、放つ言葉を選んで欲しい。そう思って恋人と手紙のやりとりした。何通かやりとりしたけれど、質問したことに答えてもらえなかったり、返事がもらえない状況になったりと、うまくいかなかった。おそらく、わたしにとって手紙というのは最終手段みたいなところがあって、直接会うよりは相手のことをより深く考えられるような気がしていたんだけど、相手にとっては違ったんだと思う。