ブライアン・フェリーが唄う“Smoke gets in your eyes”を何かのタイミングで思い出し、何度も脳内再生されてどんな場面だったか無性に気になったので、久々にソフィア・コッポラの『SOMEWHERE』を観てみた。そこまでグッとくる映画でもないんだけどいくつか良い場面があったことを再発見した。映画のプロモーションのためイタリアに滞在中の父スティーブン・ドーフと娘エル・ファニングがホテルで夜中に寝付けなくてルームサービスを頼み二人でジェラートを食べながらベッドに足を伸ばしてイタリア語吹き替えのドラマ『フレンズ』を観るシーン。ここが僕にとっては一番「旅っぽい」瞬間だ。こういう感じを旅の思い出のようなものとして鮮明に覚えている。
もう存在しない旅
2020年にフランスに行った時、ジャン・ジュネのタイトルでしか知らないブレストという町に行った。現地の人の車に乗せられるがまま、気づくとあたり一面畑の中の田舎の馬小屋にいた。
ホテルに置いてきたの?
不思議なもので、これまでいくつもの小さな旅をしてきただろうに、「旅」と聞いてすぐに頭に浮かんだ場所は、記憶のなかで点在するホテルたちだった。
旅の気分で散歩する
ミカエル・アース監督『サマーフィーリング』は、三つの夏を三つの街で過ごす人々の映画で、彼らはある時は街の住人に、ある時は旅行者になる。