2月26日、ソウル・アートシネマは2週間の休館に入った。 3日前の2月23日、政府がコロナウイルスの警告レベルを「深刻」段階に格上げし、感染症の拡散防止のため、密集施設の利用制限と集団行事の自粛を勧告したからである。 劇場に休館の義務はなかったが、1月25日にコロナ感染者が確認され、シネコンが臨時休館に入り、映画館は人々に危険な場所とされ始めた。
映画館、Good place to escape
私がドライブインシアターを初めて体験したのは2018年3月、アメリカの多分オクラホマ州だったと思います。友達といわゆるアメリカ横断ドライブをしている最中でしたが、一度くらい体験してみたいなと思って寄り道しました。そこでドハマり!まず料金は映画2本立てで一人5ドルという安さ。広大な土地に来場台数3台という開放感(しかも途中で一台帰った)。ポップコーン・エクストラバターとドクターペッパーの無限ループ。タバコ吸い放題。喋り放題。寝放題。しかも寝落ちしたら朝まで寝てから帰ってもいい。
“この声”は誰のものだろうか、自分は何者なのだろうか。
私の住んでいる三階建てアパートの隣には公園があって、休日にはいつも子供たちの賑やかな声で起こされる。気持ちいい季節には開け放ったベランダから公園を見下ろしたり、向かい側で玄関ばかりこちらに向けているコンクリート打ち放しのハイグレードマンションを眺めたりするのだが、なんだかそわそわして部屋の中に戻ってしまう。まるで覗き見でもするような位置関係だし、たぶん普段はそこまで暇ではないからだ。
断片的なもの
友達に誘われて銀座シネパトスで『銀河鉄道の夜』を観た。7月の終わり。レイトショー。変な色の猫。細野晴臣の音楽。映画を観たあと人が全然いない銀座の街を歩いた。夏の平日の夜に銀座が閑散としていることなんてあるのかな。映画の記憶と合わさっているからか、思い出す景色がのっぺりしている。まっすぐ続く道と規則的な街灯。わたしたちはコンビニでビールを買ったかもしれない。
いつか映画館で会うひとへ
ウィリアム・キャッスル監督の『ティングラー』という映画。人の恐怖が生む怪物「ティングラー」がうっかり映画館の中に放たれてしまう。当時、劇場ではいくつかのイスに座った人の座席に電気が走り、ビリビリっと来て脅かされる、という演出をしていたらしい。まるでスクリーンの向こうの映画館から現実の映画館へティングラーが飛び出してきたかのように、スクリーンの外の安全な位置から覗いていたはずが恐怖がこちらへやってくる。
親愛なる映画館へ
自粛していたのもあって、もう会えなくなって1ヶ月以上も経ちました。すごく寂しい。少しずつ暗くなる館内で、予告を観て、次第に心も焦点がスクリーンへと定まっていき、いつしか映画館にいることさえ忘れてしまうぐらい没頭して迷子になって、明るくなった頃にはどう言葉にして良いかもわからない感情が頭上にふわふわと浮いていて、その気持ちを掴みながら最後はウィスキーとともに身体に流し込んでいく。