「興奮」というテーマには難儀しました。映画のほとんどがなんらかの興奮でできているし、映画館で映画を観ること自体がもう興奮だから。
遠くから聴こえる歌
パトリシオ・グスマンの『チリの闘い』を見たのは2016年の秋だった。満員のユーロスペースで。あの映画を観てからずっと、社会主義政権の支持者たちが歌っていた「大丈夫 アジェンデ 私たちがついている」という歌がいつまでも耳にこびりついている。
かなわない
興奮するのって難しい。正しくできない。わたしは幼い頃から自分が興奮しているとき、その状態を認識したとき、いつも少し後ろめたい気持ちになった。そしてそのうちに情熱がほとんどなくなり、興奮というものは自分にとって「するもの」ではなく「させるもの」になってしまった。
呼吸の波紋
興奮した時、脈拍が上がり、心拍数が上昇していく。そしてこの鼓動が誰にも聞こえなくて、自分自身にしか聞こえないこと、それがとても怖い。興奮という喜びにも悲しみにも近しい感情が、自分にはコントロール出来ない未知数な場所にあるから、わたしはまだ手探りにその感情と向き合うしかないのだ。